ラケットを買い替えようと考える方のほとんどは、新しいラケットにいろんな期待を持つでしょう。
売る側がこんなことを言うのは少し不謹慎かもしれませんが、ラケットに対してあまり大きな期待を抱くのは間違いの元になるかもしれません。
期待すればするほど、選択を間違ってしまう確率が高くなるような気がします。
なぜなら、ラケットのことだけを考えすぎて、一方的に盛り上がってしまうからです。
どんなラケットも、選ぶ際にはプレイヤーとの相性で良い悪いを判断するべきなのですが、ほとんどの方は自分との相性を考えずに、ラケットのことだけを考えて、そのラケットの持つ特性が単純に自分のプレーにプラスされると考えるようです。
ラケットドックでは、ラケットの影響でショットが安定しなくなる例を数多く見ていますので、新しいラケットが自分の動きにマイナスの影響を与える可能性があることについても、頭の隅に置いていただきたいと思います。
ラケットについて詳しい方ほど、いろいろ考えてラケットを選び、ストリングについてもいろいろ工夫して、セッティングを煮詰めたりしているのではないでしょうか。
ただ、その思考の組立が、ラケットが自分のプレーに与える影響のことを考えずに、ラケットのことだけを考えて行われるため、狙った効果を得られないということが多々あります。
例を挙げれば、アウトを減らすために飛ばないセッティングにしていくことで、本人のスイングからボールの軌道を抑え込む要素が減って、力を解放して飛ばすだけのスイング傾向になり、結果的にアウトが減らないというパターンです。
この逆では、自分のショットにもっとパワーが欲しいと考えて、パワーのあるラケットに持ち替えることで、身体のほうがアウトを恐れて元気よく振り切れないスイングになって、かえってボールの勢いが無くなるということもあります。
■ラケットを持ち替えただけで上手くなる!?
ラケットドックでの「ラケットを持ち替えるとプレーが良くなる」という言い方には、もう少し踏み込んだ説明が必要かもしれません。
この言葉を聞いただけでは「ラケットを替えただけで上手くなるなんて、何だかチョット疑わしい」と思うのが自然でしょう。
■もともとできたことが、できるようになるだけ
正確に言えば、ラケットを持ち替えることによって、その人が本来持っていた運動能力、テニスのプレー能力が発揮されるだけなのです。
それまでは封印されていた「もともとできたこと」が、封印が解かれて、すんなりできるようになるということです。
決して、従来持っていなかった技術や能力が新たに身に付くわけではありません。
ラケットを持ち替えて数分で起きる変化を技術の習得だとするには、それにかかる時間が短すぎます。
■足かせが外れる、重荷が取れる
テニスプレイヤーの動きは「打ったボールを相手コートに入れる」というテーマに支配されています。
「ネットせず、アウトしない」という制限は絶対的なもので、これを守ろうとしないプレイヤーはゲームに参加することすらできません。
ボールをコートに入れるための力加減の調節が難しくなればなるほど、身体の動きから自由が奪われて、ギクシャクした状態になります。
緊張した試合などでありますが「ネットしないように打つと、すぐにアウトしてしまいそうな気がする」というような状態です。
コートに入れることが優先される結果、本来持っている運動能力が発揮できずに、封印されたままになっているパターンは決して少なくありません。
ネットせず、アウトしないように打つために、それまで使っていたラケットではさまざまな調節が必要だった場合、
その調節を最小限にするラケットを見つけ出すことで、プレイヤーの動きの自由度が拡大します。
足かせが外れたプレイヤーの動きには躍動感が出てきます。
それと同時に、不要な力みが取れてリラックスした感じも生まれます。
■封印された力の解放
テニスは、さまざまな状態のボールを打ち返すスポーツであり、ワンパターンの打ち方では返球できないため、経験期間に応じて、さまざまな打ち方がプレイヤーの身体の中に蓄積されています。
今使っているラケットの性能が合わないために、本来はいろいろなことができるのに、それらが身体の中に封印されて、安全性を優先した萎縮した打ち方になっているというパターンは少なくありません。
ラケットによってもたらされていた障害を取り除くことが、ラケットドックの実際の効果です。
そういう意味では、プラスを作り出すのはなく、マイナスを排除するのがラケットドックなのです。
プラスアルファの獲得ではなく、障害の排除だからこそ結果が早く出ます。
ほとんどのプレイヤーは
ラケットで損をしている!